議長とは会議を代表し、会議の運営を統括する役職で、ニュースで大きく取り上げられることはないが、それぞれに議会を代表する長として奮闘しておられる。私が就任した頃、ニュースに取り上げられていた議長として、米ミネアポリスの市議会議長と台湾の高雄市議長がいる。
米ミネソタ州ミネアポリスの市議会議員団は2020年6月7日、同市で黒人男性ジョージ・フロイドさんが白人警官による暴行で死亡した事件を受け、市の警察組織を解体し、再生すると宣言した。CNNの取材にベンダー市議会議長が「ミネアポリス市警を解体する決意だ。真の社会の安定を実現するため、公共の安全の新しいモデルを構築する」と述べている(時事通信)。市民の怒りを治めるために、その後全米を巻き込んだデモに発展した事件の収束を図るために出した議会の結論であるには違いない。
その前日の6月6日には、台湾高雄市議会の議長が自殺している。台湾総統選挙に出馬した韓国瑜市長のリコールが台湾で初めて決まった日の午後8時45分マンション17階の自宅から転落し、死亡が確認された。地元メディアによると、許議長は最大野党・国民党所属で、63歳だった。同日のリコール住民投票で罷免されることになった韓市長を、2018年の市長選時から熱心に支援していた。許氏は昨年夏に軽度の脳卒中にかかり、体調を崩していたという。許氏はリコール運動に憤慨していたが、リコールが成立した6日夜、声明を出し「投票結果を尊重する」と表明していたが、帰らぬ人となった(時事通信)。
身近なところでは、最近話題になった千代田区議会の小林議長の対応が印象深い。区長の「議会解散通知」を断固受取り拒否、いやその前段での百条委員会、証人尋問、刑事告発議決等、議長の仕事は区や区議会緊急事態の時にこそその手腕が問われるものであろう。
今回、千代田区長が誤解した「不信任議決(内閣は決議、国会では議決)」は、地方自治法により普通地方公共団体の長に対する不信任決議が認められているもので、地方自治法第178条の規定により、議員数の3分の2以上が出席する都道府県または市町村の議会の本会議において4分の3以上の賛成により成立する。地方自治法第281条以下に定められた東京都特別区においても、この規定が適用されている。
提出された長は「議会の解散」か「辞任」を選ぶ(どちらも選べなくて時間切れの例もある)。議会解散後もう一度長に対する「不信任議決」が再可決されると、今度は長が「出直し選挙」ということになり、自治体住民に信を問うということになる。
「不信任議決」は、23区でも過去に3回起きているそうである。1967年5月「練馬区」、1993年「葛飾区」、1999年4月「足立区」。いずれも区議会を解散し、区議会選挙が行われた。結果はそれぞれ違うが、最終的に失職するに至った。
区長も区議会議員も公職で、国・地域は違えど、民主主義によるのであれば、住民とともに生きてその意見を酌み発言し、自らの行動の説明責任を担って生きていく定めの者たちである。