一般質問 2012年

 自由民主党の明戸まゆみです。自由民主党荒川区議会議員団を代表して、質問をさせていただきます。補欠選挙で当選しましてから3年と3ヶ月。一般質問の機会をお与えいただきました同僚議員の皆様に大きく感謝を申し上げます。
今回は、荒川区が直面している課題のうち、高齢化と協働のまちづくり、そして産業振興の3つのテーマについて質問させていただきます。

 荒川区をとりまく状況は厳しい。グローバリズムの中で日本にも世界規模の経済不況の影響が及んでいます。日本では昨年「『戦後』から『震災後』へ」という言葉が聞かれましたが、時代の転換点であることは確かでしょう。これからの新しいパラダムとは何でしょう。戦後のキーワードが自主自立だったとすると、震災後は絆のある協力社会。中央集権的、硬直的なタテ割り社会に対して、地方分権あるいは地域主権的なしなやかなヨコつながり社会へ、1・2次産業の3次産業へのシフトから、3次産業が1・2次とつながる6次産業化へ、という兆しは震災前からありました。そして、今年新年の新聞各社の社説等では、大量生産・大量消費社会から幸福社会へ。国際化・情報化の波に流されず、むしろそういった国際化・情報化を取り込みながら、力強く荒川区をけん引していく先はどこへ行き着くのでしょうか。

まず最初に高齢化についてお聞きします。日本の高齢化は、世界の関心事でもあります。戦後の復興期に生まれた団塊世代の高齢化とその次世代の少子化は、高度経済成長をもたらした半面、戦後66年の日本の持続可能性をゆらがしています。お年寄り1人を支えるのに、安定していた騎馬戦型からバランスを崩しやすい肩車型へ変化していくと予測されています。
荒川区の高齢化も急速に進んでいくと予想されています。「第5期荒川区高齢者プラン」の中間まとめによれば、65歳以上の高齢者は平成23年に23%を超え、今後4年間で4,000人がこれに加わると予測されています。第5期の介護保険料の値上げは必至で、社会保障への負担は増すばかりです。
区内のお年寄りとお話ししていると「老後は心配だけど、ぴんぴんころりでいきたいね」という声を多く聞きます。なるべく長く、在宅で健康で生きがいをもって日常生活を送りたいということです。荒川区ではこれを叶えられる環境が整備されているでしょうか。荒川区には、「ころばん体操」や「おたっしゃランチ」、社協の「いきいきサロン」、老人福祉センターやひろば館・ふれあい館の文化講座やサークル等を行っています。介護認定を受けていないお年寄りの数は3万6千人弱、これからも増えていく人数に合せて、民間の協力も得て、実施数のパイを増やすことも必要となってくると思います。     
「荒川区政世論調査」によれば、「区主催の講座・教室に参加している」割合は60代で最も多く56%を占め、そのきっかけとして「身近な場所で実施していたから」をあげた人はで46%でした。逆に参加しない理由として、最近の60代はまだ働いている人も多いですから、「時間に余裕のない」人の割合はのぞいて、上位5位までの理由は、活動のきっかけがない、何をしたらよいかわからない、情報がない、興味をもてないとあり、顧客ニーズにマッチした内容と魅力的な情報発信が足りないということが分ります。実際、お年寄りに聞くと、参加したいけれどどこで何をやっているか分らないという答えを多くもらいます。お住まいに身近な地区の情報、町会等の地域活動、文化講座やサークル、お年寄りが日常的に利用しやすい民間や公営の施設についての情報を掲載した効率的で魅力的な情報媒体「おたっしゃ新聞」のようなものを作成し、閉じこもりがちなお年寄りに提供を行ってはいかがでしょうか、特に公的な機関からの呼び掛けに応答の少ないお年寄りを訪問する際に、そういった情報提供できるのではないかと思いますが、区の見解を伺います。

 介護保険がはじまって11年、改善されながら体制が整ってきました。予防介護という考え方は平成21年の第4期高齢者プランの頃から出てきました。今回の第5期では、「地域包括ケアシステム」の構築で、要支援1から要介護2、一次予防対象のうちに早期発見とケアを促進すること、そして介護と医療の連携という方向性が出てきました。新たな方向性を踏まえ、荒川区としてのこれからの取り組みを伺います。
 先進的な事例として、予防医療で肺炎、脳卒中、心臓病の重症患者が減少した北海道の「夕張医療センター」の例があります。財政破綻した市立病院の再建方法として、入院できるベッド数171床から緊急入院させる19床のみ残して、高度医療の必要な患者には大病院と連携をして対応するという体制を取っています。介護や看護とも連携して24時間対応する一方、訪問診療を徹底的に行い、禁煙・食事・運動指導、ピロリ菌除去、口腔ケア、リハビリ、肺炎球菌ワクチンの接種を行い、重篤患者減少に成功しています。また、軽症の119番も抑制されているということでした。この方法は病院嫌いのお年寄りの重篤化を防ぐことができるという意味では、これまで手付かずだった部分の改善が見込まれ、介護保険や医療保険の軽減につながっていくと思います。
荒川区では、来年尾竹橋に新たな特別養護老人ホームが開設しますが、新たな施設建設の困難さもありますが、要介護認定者に対するアンケートでは、在宅サービスを利用する方の75.6%、介護予防サービスを利用する方の88.2%が自宅での生活を望んでおり、荒川区でも在宅介護を促進していく必要があると思います。これまでの訪問介護に、訪問看護、みとりも含めた訪問診療を組み合わせた手厚い支援が求められます。
 「病院で死ぬということ」という著書もあるホスピス医療の第一人者、山崎章郎(ふみお)医師の「ケアタウン小平」では、終末期患者が自宅でホスピス同様のケアを受けれるよう、医師と訪問看護、介護などが緊密に連携して終末期の患者でも在宅で24時間支える体制を整えています。先日TV番組で紹介されていましたが、印象的だったのは、在宅で療養している患者さんが、子どもの頃から聞いていた夕飯をつくる台所の音を聞くと、癒されるという証言でした。自宅はやはり安心できるということでしょう。病院や施設に入っても、刺激の少ない中で生活能力を落としていく危険性もあり、在宅介護を1つの選択肢として整備する必要があると思います。
 荒川区でも荒川区医師会がかかりつけ医の紹介を行っており、訪問介護や訪問看護も少しづつ整備されてきましたが、医療との連携のしくみづくり・高度医療とかかりつけ医療の住み分けについての情報把握と、区民に対する情報発信が必要になってくると思われますが、いかがかでしょうか。区の見解を伺います。

 加えて第5期の高齢者プランで大きく打ち出されているのが、認知症支援です。認知症サポート医の研修もはじまっており、東京都の公式サイト「とうきょう認知症ナビ」では荒川区内の医師も59名が研修を受け、「認知症サポート医」として名簿が公表されています。認知症の原因のうち、特に多いのが脳血管性認知症とアルツハイマー型認知症です。この二つとその混合型を合わせると、認知症全体の8割から9割を占めると考えられており、その他、慢性硬膜下血腫、頭蓋内新生物、正常圧水頭症、甲状腺機能低下症、ビタミン欠乏症、低酸素血症、電解質異常等があげられ、原因によって治療法も異なり、早期発見と正しい診断による治療で進行を遅らせることもできます。認知症の早期発見のための、気軽に相談する事のできる「もの忘れ相談」といったものの整備をするべきと考えますが、区のご見解を伺います。

 西川区長は「施政方針説明」の中で「基幹自治体」として国や都をもけん引していく気概のある荒川区の姿を訴えておられましたが、一方で税の使い道の平等性、行政改革からの効率化という要請もあり、区行政には自ずから線引きしなければならない部分もあり、区民の力を借りて実現していくこともあると思います。地域のリーダーとしてぜひ区民との協働を進め、より良い方向へけん引していってほしいと思います。
 パラダイムの変化によって、不平を唱えつつ指示を待つ従属型社会から、自由と自立を重んじる参加型社会へと言われます。また、モノからコトへ、物を手に入れることでなく、何を体験し、行うのかということで幸せが実感できるということへ変化したということも言われています。地域社会のために自らかかわり、行動することで「幸福感」を味わうことができるというのは、荒川区が目指す「幸福実感都市」の姿とも一致しているわけです。
 荒川区のこれまでの協働のしくみは主に町会組織を介してのものとなっており、国内ではすっかり崩壊してしまったところも多い中で、荒川区の町会組織は今でも大いに機能しています。「絆」という言葉が注目された昨年からは、防災の砦としても町会がクローズアップされるようにもなりました。荒川区の地域コミュニティの基盤ともいうべき町会ですが、町会の方々からは一方で、高齢化が課題だとして多くの声をお聞きします。
 協働の担い手の育成を目的に、荒川区で開校したコミュニティ・カレッジも1年半。一期生は後期課程の授業に入りました。受講生の方々のお話を聞きますと、町会とはまた違った新しい視点で学んでおられる様子で、町会との関係は良好に保てるだろうかという懸念が浮かびます。お互いの理解のためにも、荒川区内の町会が行うイベント等へお手伝いに行くことを研修として行ってははいかがと考えますが、区の見解をお伺いいたします。

 昨今のパラダイムシフトの中で象徴的だと思ったことに、100年以上続く世界的なイベントに万国博覧会というものがあります。珍しい異国のモノがたくさん並ぶことが特徴ですが、最近ではモノが並ぶだけでなく、モノをつくる過程そのものを見てもらうイベントがあるそうです。「世界デザイン首都」、「ワールド・デザイン・キャピタル」という取り組みで、カナダの国際インダストリアルデザイン団体協議会が、「デザインで都市の文化や経済を発展させ、生活の質を向上させている都市」を選定し、期間中デザイン関連の様々な催しが行われるそうです。2008年はイタリアのトリノ、2010年は韓国のソウル、2012年の今年はフィンランドのヘルシンキで開催され、今年は350もの催しがあるそうです。そして、デザインをモノづくりだけでなく、まちづくりや社会問題の解決にも応用しており、今年開催のヘルシンキでは市民の手でつくられる「公共サウナ」、健康や高齢者施設、子育て支援、禁煙推進、医療、働き方まで人の動きを含むデザインを、住民に身近な問題として住民自らが参加して知恵を出しながら解決を図っているとのことです。
 時代が変化するということは、区民ニーズや地域課題も変化するということです。多様化、複雑化する要請に的確に対応するため、区民や事業者、地域団体等、そして区といった地域にかかわる様々な主体が適切な役割分担のもと、協働のまちづくりを進める必要があります。コミュニティ・カレッジ在学生や区民の方々から日頃多くのまちづくりに対するご意見をお聞きしますが、区独自では実現できないこともあり、区民等との協働が不可欠だとたびたび感じることがあります。23区内でもいくつかの区ではすでに先行して行っていますが、荒川区でも広くコミュニティの活性化策やアイデア、デザインを公募して、審査し、より良い企画を実現するための費用を助成する「まちづくり助成制度」をつくってはいかがかと考えますが、区の見解をお聞かせください。

 最後に産業振興および情報発信についてお聞きします。西川区長の専門分野である産業振興について浅学である私が質問することをお許しいただければと思います。日本はグローバリズム、円高、産業空洞化という幾多の波に取り囲まれています。「失われた20年」は、西川区長が2008年に著した「産業クラスター―政策の展開」にもありますように、日本経済に構造的な問題があったという認識で意見は一致するものと思われます。では、どのような構造にすれば良いかということも答えは出ていて、これまで語ってきた言葉でいえば、しなやかなヨコ型社会をつくることであります。グローバル競争力の強化のための大・中小企業のパートナーシップの確立と広域的な連携、荒川区においては都市型産業集積地であるメリットを活かしてソフトの「荒川版産業クラスター」を形成することです。手法はというと、産学連携、創業支援、研究開発費の中小ベンチャーへの投下、地域の新事業創出のプラットフォームの整備、これまで荒川区が取り組んできたことです。
 オープン・イノベーションとして、平成18年にはじまった荒川区モノづくりクラスター、MACCプロジェクトは、あすめし会や勉強会、交流会を通して「顔の見えるネットワーク」から数々の新商品が開発され、売り上げも上げています。「MACC通信」もすべて拝見させていただきましたが、ぜひもっと区内外に対しても宣伝していただければと思います。そして現在90社の参加企業があるということですが、もっと多くの企業に協力してもらって大きな動きにしていただければと思います。高齢者向けの健康・福祉関連製品開発だけでなく、荒川区の産業集積には多様なものづくり企業が集まっている特徴から、MACC参加企業のそれぞれの強みを把握して多くの分野で研究会を立ち上げてほしいと思います。
 手前味噌で恐縮ですが、30年以上も交流事業を行ってきた地域交流センターの分室、お酒も飲める会議室ではトイレ研究会やICカード研究会等、多くの研究会が開かれ、全国に広がった「道の駅」もここで議論されました。学者、官僚、学生、地域活動家等々多様な参加者を得ての議論の積み上げからお話させていただければ、現場の人が一番よく知っているということです。幼児向けの製品は子育てをしているお母さん達が一番よく知っているし、ゴミのことはゴミを収集してる人が一番よく知っているのです。マーケティングの部分で区民をぜひ商品開発のネットワークに加えていただければと思います。新時代のモノづくりはこのようなものではないでしょうか。
 区では来年度新たに「新製品・新技術大賞」を創設し、「モノづくりの街あらかわ」の振興を目指すとのことですが、時代の方向性はすでにヨコ並びに変化しています。大いに宣伝して中小零細企業はもちろんのこと、MACCプロジェクトにも参加していない海外でも評価されているトップ企業がまだまだ区内にはたくさんあります。新製品開発の助成制度の宣伝も含め、企業の掘り起こしを行い、ぜひ協力してもらってはいかがでしょうか。
 また、大田区では「大田ブランド」という言葉を使っていますが、荒川区の「荒川ブランド」はこれまで伝統工芸や荒川マイスター、荒川のおすすめ品で区民の選んだお土産等の食品では使われてきましたが、工業系のモノづくりの分野ではあまり使われてこなかったと思います。MACCプロジェクトの製品も含め、荒川区発の工業系の製品も新たに「荒川ブランド」と位置づけ、多様性をもウリにして海外展開も視野に入れて売り出すべきだと思います。
 また現場の方からのお話で、MACCプロジェクトやあらかわ経営塾にも参加したことのある方のお話でしたが、区内には廃業しようとしている社長さんが多く出てきている。そういった社長さん達は下請けの発想から抜け出せないで、モラルや経営理念の大切さ、企業の役割が世の中に役立つものをつくることだという初歩の部分さえ知らないまま来ている人もいる。もう20年もそうだというお話でした。そういう社長さんを集めて初歩の部分を学ぶ機会を与えることも公共事業としては必要ではないかということでした。10数年前に日本国内ではどうしても助からずに途方に暮れた結果、アジアに進出して再建した方のお話だけに重いものがあると思いました。若手の創業者育成に加え、50代、60代の経営者に二次創業で次の希望をもってもらうということも必要なことと考えます。
 来年度から起業・創業のインキュベーション機能の拡充として、事務所費用を助成するとあります。著書「産業クラスター」であげられた発展方向として、コンテンツ産業、ロボット産業、観光産業といった荒川区ではまだまだ弱い分野があげられていました。こういった弱点を補うことも含め産業経済の構造を転換していくために、このインキュベーションの機能強化をしていただきたいと考えますが、区のご見解をお伺いします。

 商店街振興については、ライフワークですので毎回質問させていただいております。多くの商店街活性化の手法があり、少しづつでも良いから取り組むべきだということを言ってまいりました。来年度新たにはじまる「らく楽商店街モデル事業」、内容は商店街活性化のための宅配事業とのことですが、商店街独自では担い手不足の面もあり、区のみならず民間の協力も得て実施をしてほしいと考えておりますが、いかがお考えでしょうか。ご意欲のほどを伺います。

 荒川区の一つの弱点として、情報発信の弱さがあると思います。広報には区の組織をヨコ串にさす総合化が求められるのだと思います。区長はじめ区職員、われわれ議員がこのように熱心に区民のために議論をしているということは、3年前、一般区民であった私にはまったく伝わっていなかったのでありますが、区民の反応を見ている限りそれほど状況は変わっていないのが残念です。一区民だった時のことを思い出して、防災も含めあらゆる分野での情報発信の強化をお願いしたいと考えております。ぜひ有効な事業については効率を考えて規模の拡大をし、多くの人が参加できるようにすることも必要だと思います。予算の足りない分は区民のみなさまとの協働でも実現できると思います。情報発信に関しては時々質問もさせていただいておりますが、今回の一般質問では産業振興と「都電のバラ」を荒川区としてどのように情報発信していくのかお伺いいたしております。
 昨年は「都電荒川線100周年」行事があいつぎ、沿線4区との連携シンポジウムも開催されました。そのシンポジウムでは、「都電のバラ」は荒川区に加え、他区の沿線のバラも紹介されておりました。今年第4回目となる「あらかわバラの市」をどのように盛り上げるのかお伺いいたします。これまでは、町屋駅周辺でバラの販売といくつかのショーがあるばかりでしたが、4回にもなると何かしらの新しい取り組みを加味しても良い頃だと思います。まずは区民が自主参加でき、盛り上がれる企画をと思いますが、どのようなことを計画しているでしょうか、お伺いいたします。

 今年の5月22日には東京スカイツリーがオープンします。ツリーだけでも1ヶ月に552万人、周辺施設には2085万人の来場者数が見込まれています。荒川区内の日暮里駅等を通って、バス等でスカイツリーに向かう人も多くいるのではないかと予想されます。そういった人々をただ通過させないで、荒川区の観光、区内の飲食店・商店の営業情報の入ったパンフレットを作成して配布し、少しでも荒川区内に呼び止め、産業振興を図る対策を行うべきだと考えます。しかし、これまでは区が直接、個店の宣伝・広告をすることは公平性の上から憚られてきましたし、おそらく今後もそのスタンスは変わらないと思います。こういう時こそ、民間主導の力を得て、方法によっては個店が少しづつ負担する形でパンフレットをつくることもできると思います。区民に協力してもらって、商店や飲食店の情報発信を行っていくことについて、区の見解をお伺いいたします。

 以上、3テーマにわたっての第1回目の質問を終わります。理事者のみなさまには真摯な回答をお願いいたします。よろしくお願いいたします。